2026.06.26
IT資産管理IT資産管理ツールはクラウド化すべき?オンプレミス型との違いと選定基準を解説
目次
オンプレミス型での運用が長らく主流だったIT資産管理ツールも、近年はテレワークの普及や情シス人員不足を背景に、クラウド型への移行を検討する企業が増えてきました。
そこで本記事では、クラウド型とオンプレミス型のIT資産管理ツールについて、それぞれの仕組み・メリット・デメリットを整理し、7項目の比較表と企業タイプ別の選び方を解説します。自社のIT運用体制や業務要件に照らし合わせ、最適な形態を判断する材料としてお役立てください。
オンプレミス型IT資産管理ツールとは
オンプレミス型IT資産管理ツールは、自社内にサーバーを設置して稼働させる形態のツールです。社内ネットワーク経由で管理対象のPCやデバイスから情報を収集し、IT資産台帳の作成、アプリケーション管理、操作ログの取得などを実施できます。
サーバーの調達・構築・運用を自社で担うため、社内のセキュリティポリシーに沿った独自の運用設計が可能です。社外ネットワークと接続しない閉鎖網環境でも稼働できる点も大きな特徴であり、金融機関や医療機関を中心に、現在も主要な運用形態として導入が続いています。
オンプレミス型IT資産管理ツールのメリットとデメリット

オンプレミス型IT資産管理ツールには、自社サーバーで運用するからこその利点と、運用負荷の大きさという課題の両面があります。
メリット・デメリットを順にみていきましょう。
オンプレミス型IT資産管理ツールのメリット
オンプレミス型の主なメリットは以下の5点です。
- 自社ポリシーに沿ったカスタマイズの自由度が高い
- 既存の社内システムや基幹システムとの連携が実現しやすい
- 閉鎖網環境の端末も管理対象に含められる
- 操作ログ取得など機能が成熟しており、カバー範囲が広い
- データを社内で保管できるため、外部委託に伴う情報統制の懸念が少ない
特に評価されるメリットは、自社で使っている人事システムやAD(社員情報の管理基盤)と直接データをやり取りしながら運用できる点です。たとえば社員の入退社情報を人事システムから自動で取り込み、対象PCの利用権限を即時で更新するといった、自社独自の運用フローも構築できます。
インターネットに繋がないPCも管理対象に含められるため、外部に情報を出せない金融機関や医療機関の端末もすべて社内サーバーで一元管理できます。
オンプレミス型IT資産管理ツールのデメリット
一方、オンプレミス型のデメリットには以下のような点があります。
- 初期投資が大きい(サーバー調達・構築費・初期ライセンス費)
- サーバーの運用・保守を自社で担う必要がある
- バージョンアップ作業を自社のタイミングで実施する負担
- 災害発生時にサーバー被災のリスクを抱える
- テレワーク端末や社外端末の管理が難しい
最大の課題は、サーバーの管理を自社で抱え続ける負担です。たとえばOSやツール本体のパッチ適用、ハードウェアの故障対応、定期的なバックアップといった作業はすべて情シス担当者の手作業になります。
情シスが他業務と兼任しているような中小企業では、これらの作業が積み重なって本来やりたい業務改善や新規導入の検討に手が回らないという状況が起こりやすくなってしまうのです。
クラウド型IT資産管理ツールとは
クラウド型IT資産管理ツールは、ベンダーが運営しているサーバー上で動くツールです。利用企業は自社サーバーを用意する必要がなく、ブラウザから管理画面にアクセスして、社内のPCやスマートフォンを一元管理できます。
契約後すぐに使い始められるため、導入までの期間を短くしたい企業に向いています。社員が自宅や外出先から接続するPCも、インターネット経由で同じ画面から状況を把握できる点も特徴です。バージョンアップはベンダー側で自動的に行われるため、自社で更新作業を行う必要もありません。
クラウド型IT資産管理ツールのメリットとデメリット

クラウド型IT資産管理ツールには、サーバー運用負担の軽さや拡張性の高さといった利点がある一方、長期コストやカスタマイズ性の制約という課題も存在します。
メリット・デメリットを順にみていきましょう。
クラウド型IT資産管理ツールのメリット
クラウド型の主なメリットは次のとおりです。
- サーバーの調達・構築・保守作業が発生しない
- バージョンアップが自動で行われ、常に最新機能を利用できる
- インターネット経由のため、テレワーク端末や社外端末も管理対象にできる
- 初期費用を抑え、短期間での導入が実現する
- 複数拠点をまたいだ一元的なデバイス管理が容易
最も大きなメリットは、サーバーを買って構築して保守し続ける作業がまるごと不要になる点です。OSのパッチ適用、ハードウェアの故障対応、ツール本体のバージョンアップといった作業はすべてベンダー側で実施されるため、情シス担当者の負担を大きく減らせます。
情シスが他業務と兼任している中小企業や、テレワーク中心の働き方を取り入れている企業にとって、導入しやすい形態といえるでしょう。
クラウド型IT資産管理ツールのデメリット
クラウド型の主なデメリットには以下5点が挙げられます。
- 長期利用ではランニングコストが累積し、総保有コストが膨らむ場合がある
- カスタマイズの自由度が限定的
- インターネット非接続の端末は管理できない
- データの保管場所がベンダー側になるため、業界によっては社内規定との調整が必要
- オンプレミス版と比較して機能数が少ない製品も存在する
注意すべきは、月額費用が利用台数と利用年数に比例して積み上がる点です。たとえば100台を月額1,000円のクラウド型ツールで管理した場合、5年間で600万円、10年間で1,200万円の費用が発生します。
オンプレミス型の初期投資と保守費を5年・10年スパンで足し合わせた金額と比較し、自社の利用台数と想定年数で総額を試算したうえで選定を進める形が望ましいでしょう。
クラウド型とオンプレミス型のIT資産管理ツールを7項目で比較
クラウド型とオンプレミス型のIT資産管理ツールは、コスト構造から運用負荷、対応範囲まで多くの点で違いが見られます。両者の違いを以下7つの観点で整理しました。
- 初期費用の違い
- 運用コストの違い
- 導入スピードの違い
- カスタマイズ性の違い
- セキュリティ面の違い
- BCP対応の違い
- 管理対象範囲の違い
| 項目 | オンプレミス型 | クラウド型 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 高め(サーバー調達・構築・ライセンス) | 低め(設定費用のみ) |
| 運用コスト | 中〜高(保守契約・人件費・電気代) | 利用台数に比例(月額ライセンス) |
| 導入スピード | 数か月単位 | 数日から数週間 |
| カスタマイズ性 | 高い | 限定的 |
| セキュリティ | 自社設計次第(閉鎖網運用も可能) | ベンダーのセキュリティ基準に依存 |
| BCP対応 | 自社サーバー被災リスクあり | ベンダー側の冗長化に依存 |
| 管理対象範囲 | 社内ネットワーク内の端末 | インターネット接続環境のすべての端末 |
初期費用の違い
オンプレミス型は、サーバー機器の購入、ネットワーク構築、ツール本体のライセンス費用が初期段階で必要です。規模や構成にもよりますが、数百万円規模の初期投資が発生するケースが一般的で、サーバー構築を外部のSIerに委託する場合はさらに構築費用が上乗せされます。
クラウド型は、サーバーを自社で用意する必要がないため、初期段階で発生するのは設定費用と最初の月額ライセンス費用だけです。初期費用は数十万円程度から検討できる水準で、契約後すぐに使い始められます。
運用コストの違い
オンプレミス型では、サーバーのハードウェア保守契約、データセンターの電気代、運用を担う情シス担当者の人件費が継続的に発生します。年間で数十万円から数百万円規模の保守費用が継続するケースもあり、情シス担当者の工数も含めると実質的な運用コストはさらに膨らみます。
クラウド型は月額ライセンス費用が中心で、1台あたり月額数百円から数千円程度が一般的な水準です。台数や利用年数が積み重なるほど累計コストが増えるため、何年使い続けるかを想定したうえで、オンプレミス型の総額と比較しておく必要があります。
導入スピードの違い
オンプレミス型は、サーバー機器の発注、ネットワーク設計、サーバー構築、テスト工程を順番に進めるため、利用開始まで数か月かかります。サーバー機器の納品待ちが発生したり、構築を外部に委託したりするケースでは、発注から本稼働まで半年近くかかることもあります。
クラウド型は、契約後にブラウザから管理画面にログインし、管理対象のPCに専用ソフト(エージェント)をインストールすれば運用を開始できます。導入期間は数日〜数週間程度で、本格運用までの立ち上げが大幅に早まる点が特徴です。新しい拠点を立ち上げたタイミングや、急な人員増で台数が増えた場面でも、すぐに管理対象として追加できます。
カスタマイズ性の違い
オンプレミス型は自社のサーバー上で動くため、社内独自の業務フローに合わせた機能調整や、人事システム・認証基盤との連携が比較的自由に組み込めます。たとえば「社員が入社したら自動で資産台帳に登録し、退職時に利用権限を削除する」といった独自の処理を、自社のSIerと相談しながら設計できる点が強みです。
クラウド型は、複数の利用企業に向けて標準化されたサービスを提供する仕組みのため、カスタマイズはベンダー側があらかじめ用意した設定項目やオプション機能の範囲内に限られます。自社独自の処理を組み込むことは難しい一方で、設定変更の手間が少なく、最初から完成された機能をすぐに使えます。
セキュリティ面の違い
オンプレミス型は、自社内にサーバーを置いて運用するため、ネットワーク設計から認証ルール、データの保管場所までをすべて自社で設計・管理します。インターネットから完全に切り離した閉鎖網で運用する構成も組めるため、外部からの攻撃を受ける範囲を最小限に抑えられる点が特徴です。
クラウド型は、ベンダーが運営するサーバー上でデータを管理する仕組みのため、セキュリティ水準はベンダーが提供する基準に依存します。ただし、ISO27001(情報セキュリティの国際認証)やISMAP(政府の認定制度)などの第三者認証を取得しているベンダーを選べば、自社で構築するよりも高い水準のセキュリティを確保できるケースもあります。
BCP対応の違い
オンプレミス型は、自社の建物内に置いたサーバーで稼働するため、地震や水害でその拠点が被災すると管理機能そのものが止まります。サーバーを複数拠点に分散させたり、遠隔地にバックアップを取ったりする冗長構成は、自社で個別に設計して実装しなければなりません。
クラウド型は、ベンダーが複数のデータセンターでサーバーを分散運用しているケースが多く、特定のデータセンターが被災してもサービスが継続する設計になっています。情シス担当者が自宅や別拠点から管理画面にアクセスして資産状況を確認できるため、災害時の対応継続性という観点ではクラウド型に分があります。
管理対象範囲の違い
オンプレミス型は、社内ネットワークに繋がっている端末が主な管理対象です。社外で使うノートPCを管理対象に含めるには、VPN接続を使って社内ネットワークに繋ぎ込む必要があり、VPN環境の設計や認証基盤との連携が前提条件です。テレワーク端末が増えるほど、運用にかかる手間も大きくなる傾向にあります。
クラウド型は、インターネットに繋がっている端末であれば、社内・社外を問わずすべて管理対象に含められる点が特徴です。自宅のワークスペースで使うPC、出張先のホテルから接続するノートPC、複数の支社に分散したデバイスを、それぞれのネットワーク構成を気にせず1つの画面で把握できます。
クラウド型とオンプレミス型のIT資産管理ツールの選び方
クラウド型とオンプレミス型のいずれが適しているかは、自社のIT運用体制、業種特性、働き方、コスト方針によって判断が分かれます。
両者の特徴を踏まえ、どのような企業がどちらの形態に向いているかを整理しました。

クラウド型IT資産管理ツールが向いている企業
クラウド型に向いている企業像は次のとおりです。
- 専任のシステム管理者の確保が難しい中小企業
- テレワークや複数拠点運用が業務の中心となっている企業
- 短期間でIT資産管理体制を整えたい企業
- 初期投資を抑えて段階的に運用を立ち上げたい企業
- サーバー被災リスクを避け、BCP対応を強化したい企業
特に、情シス担当者が兼任もしくは1名体制で運用している組織では、サーバー保守の負担を切り離せるクラウド型の運用効率が選定の決定要因になりやすいです。
またテレワーク中心の働き方を取り入れている企業にとっては、自宅や出張先のノートPCも同じ管理画面で把握できる対応範囲の広さが大きな利点となります。
オンプレミス型IT資産管理ツールが向いている企業
オンプレミス型が適している企業は以下のとおりです。
- 金融・医療・官公庁など閉鎖網運用が求められる業種
- 既存の基幹システムや認証基盤との深い連携が必要な組織
- IT運用専任のリソースを十分に確保できている企業
- 独自のカスタマイズや業務要件を抱える企業
- すでにサーバー資産を保有しコストを抑えたい企業
選定の決め手は、サーバー運用を継続できる体制が社内に整っているかどうかです。金融機関のように顧客情報を社外に保管できない業種や、医療機関のようにインターネットに繋がない端末を扱う組織では、社内ネットワーク内で完結するオンプレミス型が現実的な選択肢になります。
人事システムや勤怠管理システムと連携した独自運用を組みたい大企業にとっても、自由度の高いオンプレミス型は魅力的でしょう。
クラウド型・オンプレミス型のIT資産管理ツールに関するよくある質問
最後に、IT資産管理ツールのクラウド型とオンプレミス型の比較・選定段階で寄せられることの多い質問に回答します。
中小企業はクラウド型とオンプレミス型のどちらが向いていますか?
中小企業ではクラウド型のIT資産管理ツールが選択肢として有力です。サーバーの調達・構築・運用に伴う初期投資と人件費の負担を回避でき、情シス担当者が他業務を兼任しているケースの多い中小企業でも導入しやすい形態です。
ただし、業務システムと深く連携した運用や、業種規制で社外データ保管に制約がある場合は、オンプレミス型を検討する余地があります。
オンプレミス型からクラウド型へ移行する際の注意点は何ですか?
主な注意点は3つあります。
1つ目は、既存の操作ログや資産情報をクラウド型に移行できるかをベンダーに事前確認しておくこと。2つ目は、旧ツールと新ツールを並行運用する期間を明確に決めておくこと。3つ目は、既存システムとの連携カスタマイズがクラウド型でも継続できるかを検証することです。
オンプレミス型で独自に組み込んだ業務連携や認証基盤接続は、クラウド型では同等の実装が難しい場合もあるため、移行前に必要な機能要件を洗い出しておく必要があります。
クラウド型でも操作ログの詳細な取得は可能ですか?
クラウド型のIT資産管理ツールでも、操作ログの詳細取得は可能です。PC操作ログ、ファイル操作ログ、Web閲覧ログ、印刷ログ、USB接続ログなどに対応した製品が普及しています。
ただし保存期間はベンダー側の設定で、標準で数年に対応する製品が多く、それ以上の保存はオプションでの延長が可能です。
オフライン端末はクラウド型でも管理できますか?
インターネット非接続環境のPCは、クラウド型IT資産管理ツールでの管理に制約があります。クラウド型は管理サーバーとエージェント間の通信にインターネット接続が前提となるためです。
オフライン端末の管理が必要な場合は、オンプレミス型の利用、または社内サーバーを中継拠点として配置するクラウド型製品の利用が選択肢となります。
まとめ
クラウド型・オンプレミス型のIT資産管理ツールは、それぞれ異なる特徴や強みがあります。コストや運用負荷、セキュリティ要件、管理対象範囲などを整理し、自社に合ったツールを選定しましょう。
なお、いずれの形態を選んでも、IT資産管理ツールが主に扱うのは資産情報の収集と管理にとどまります。実際の業務における利用実態(誰が・いつ・何のアプリを・どれだけ使っているか)の可視化までは、別領域のツールが必要です。

NTTスマートコネクトが運営するクラウド型ツール「wakucone plus」は、端末・アプリケーション利用状況の可視化を通じ、IT資産管理ツールでは捉えきれない実態の把握まで支援するソリューションを提供しています
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