お客さまの声から生まれた業務改善レポート
wakuconeの開発ストーリー

お客さま自らがデータ主体で業務改善できるように開発した

左から順番にデジタルビジネス推進室山本真平、水野季子、髙島 里奈
左から順番にデジタルビジネス推進室山本真平、水野季子、髙島 里奈

本記事はASCII.jpに掲載された「お客さまの声から生まれた業務改善レポート wakuconeの開発ストーリー」を元に再編集したものです。

2023年03月31日
09時00分更新
文●
大谷イビサ
編集●
ASCII
写真●
曽根田元

顧客の声に正面から向き合って生まれたwakucone

NTTスマートコネクトの「wakucone(ワクコネ)」は、働き方改革、DX推進、RPAやテレワーク導入など、多くの企業が抱える働き方の悩みを解決するクラウドサービスだ。サービス概要、ユーザー事例に続く3回目は、開発ストーリーや技術面での特徴、苦労などについてNTTスマートコネクト デジタルビジネス推進室の山本真平氏に聞いた。

NTTスマートコネクト デジタルビジネス推進室の山本真平氏
NTTスマートコネクト デジタルビジネス推進室の山本真平氏

wakuconeの開発・販売を手がけるNTTスマートコネクトは、NTT西日本の100%出資のグループ会社。データセンター、クラウド、ストリーミングなど、どちらかというとB2B向けのインフラ事業に強みを持っているが、新規事業にも積極的だ。2022 年5月には初のコンシューマ向けライブコマースサービスとなる「foove(フーブ)」や、その前にはリモート聴診サービス「聴シンクロ」を立ち上げている。

2019年にサービス開始したwakuconeも、こうした新規事業の1つ。「新規事業を立ち上げるにあたって、経営者の方々に話を聞いたところ、『世間では働き方改革と言われているけど、なにから手を付けていいかわからない』という声がいろいろなところから出てきました。当時はRPAの導入が増えてきたこともあったので、働き方改革やRPA導入を支援できるサービスとしてスタートさせました」と山本氏は振り返る。

ニーズに関しては、顧客に直接聞いたこともあり、人手不足や長時間労働という課題の捉え方も実に生々しい。山本氏は「人手不足に陥っていない会社はありません。残業が100時間超えという会社もざらにありました。理由はわからないけど、人が辞めてしまうという声もありました。なんとかして、経営者の声をきちんと拾っていかなければと思いました」と語る。

長時間労働を可視化する業務時間分析
長時間労働を可視化する業務時間分析

こうした声を受け、業務改善に結びつく可視化サービスとして生まれたのがwakuconeだ。開発にかかったのは1年半ほど。パブリッククラウドに加え、自社のネットワーク基盤や動画配信プラットフォームを活用している。

PC1台1台から送られるさまざまな形をした操作ログは膨大であり、これらは様々な性格を持ったユーザーの行動を射影したビッグデータである。これらをプロセッシングし、ユーザー自身が業務改善に結びつけるレポートまでに落とし込むのは相当な苦労があったはずだ。

日次レポートを出せる基盤に途中でリプレース

サービス開始当初は月次レポートしかなく、分析も人手によるマニュアル運用が多かった。「お客さまのリクエストもありましたし、サービスとしても日次レポートは出せるようにしたかった」(山本氏)とのことで、いったんデータ基盤を作り直している。今までの月次レポートとの整合性を保ちながら、日次レポートを表示できる基盤をデータエンジニアとともに構築したのは、かなり苦労したところだという。

開発体制としては、NTTスマートコネクトのエンジニアチームに加え、インドのデータエンジニア、外部のアプリケーションエンジニアなどの合同チームだった。「インフラ、データ、アプリ開発のエンジニアが離れていると、スピーディな開発は難しい。その点、このサービスでは緊密に連携して設計から構築まで進められています 」と山本氏は振り返る。特に重要なユーザーインターフェイスやレポート周りは、UX専門のチームが担当し、顧客の声を取り入れることで、不要な情報をそぎ落とした。

直近1月のアップデートでは、重要な項目だけを一望できるダッシュボードを構築した。長時間労働の抑制など、働き方の傾向に合わせて、気づきを得られるという。「時間の経過とともに悪化している項目も視えますし、AIで必要だと思う部分のみを抽出してコメントしています」(山本氏)。

ホーム画面のファーストビューでは重要な項目だけを一望できる
ホーム画面のファーストビューでは重要な項目だけを一望できる

RPA導入に効く繰り返し作業分析 マニュアル整備や人手の追加にも

wakuconeで特徴的な機能の1つが繰り返し作業分析だ。チーム内での繰り返し作業をきちんと抽出することで、RPAの導入に結びつけられるのがwakuconeの大きなメリットだ。

通常、人が行なうPC作業を代替するRPAは、導入前の業務の棚卸しが重要になる。具体的には特定の業務で発生するPC操作がどの順番で行なわれているかのプロセスを把握しなければならない。また、導入効果を上げるために、繰り返し行なわれている一連の作業を抽出する必要がある。「RPAでの作業の抽出はいまだにアナログ作業も多いようです。PCの後ろに人が立って、作業を視ながら、ストップウォッチで測っていたという会社もあります」(山本氏)。

こうしたRPA導入で効率化を行なうためにwakuconeが実施するのが、繰り返し作業分析。PCで行なっている繰り返し作業の手順や従業員数、作業時間、回数などを分析できる。「そもそもどういう業務があるのか、どんな業務をRPA化した方がよいのか、わからないお客さまもいらっしゃいます。wakuconeで繰り返し業務を洗い出して、RPA導入を検討してもらうパターンもけっこうあります」(山本氏)という。

繰り返し作業として抽出された現状のフロー図
繰り返し作業として抽出された現状のフロー図
ロボット化の可能性についてもレポートしてくれる
ロボット化の可能性についてもレポートしてくれる

では、wakuconeはどのように繰り返し作業を認識しているのだろうか? 開発を手がけた山本氏は、「人が行なっている操作の癖から一通りの作業の塊を定義することができます。この作業の塊を集めて、どれくらい類似しているかを計算すれば、似たような作業を分類できます」と説明してくれる。つまり、「特定のファイルを開いて、編集して、メールに添付して送る」といった一連の作業をマッチングさせるのではなく、あくまでユーザーごとに繰り返し作業を抽出しているのが特徴。しかも、個々人ではない、複数人で類似した作業を抽出するため、組織内での繰り返し作業として抽出できるわけだ。

ただし、中小企業においてwakuconeの繰り返し作業がここまできれいにRPA導入に結びつく事例はまだまだ多くないという。山本氏は、「請求や見積もりなど定型作業はいっぱいあるはずなのに、手順が定まっていなかったり、担当によってやり方が違うので、そもそも繰り返し作業として抽出されないことも多いんです。電話や割り込みが入ったり、メール対応で、作業が中断してしまうこともあります」とのこと。業務マニュアルを作ったり、電話対応の担当を割り当てるといったことからスタートし、その後RPAの導入に歩みを進めるパターンになるという。

めざすのはお客さまがデータ主体で業務改善できること

wakuconeは操作ログを用いた働き方の可視化ツール、いわゆるプロセスマイニングツールであるが、独自のAIエンジンにて業務改善につながる分析まで行うサービスに落とし込むことによって差別化を図っているという。「レポートを視ることで、お客さまが判断できることをめざしました。お客さま自らがデータ主体で業務改善できるようにです」と山本氏は語る。

開発者から視ても、wakuconeの立ち位置は他社にないという。「クラウドサービスなので、PCにインストールするだけで、データ収集と分析が始まり、可視化してくれて、意味のある示唆やコメントまでしてくれます。ユニークだけど、機能的にはやりすぎかなあとも思っています(笑)」と山本氏は語る。

今後はwakuconeならではのデータ分析に磨きをかけていきたいという。「データを使って働き方を変えるための示唆はできるようになったと思います。とはいえ、お客さまによってはデータもかなり蓄積されてきていますので、データを使った予測はできないかと考えています。長く使っているお客さまのインセンティブにもなります」と山本氏は語る。データに基づいた新しい働き方、生産性の高いこれからの日本企業を作るツールとしても期待できそうだ。

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