教育機関による聴シンクロの活用事例

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Withコロナ時代によってリアルな臨床実習の機会を奪われた医学部の学生たち。この危機的状況を打開しようと、福井大学医学部では遠隔で聴診が可能な「聴シンクロ」を導入して対面実習に劣らない実習に役立てています。採用を決めた山内高弘教授にお話を伺いました。

写真:山内高弘

福井大学医学部
教授
山内高弘
「臨床実習がままならなくなったことに危機感を感じていました。
何とか打開したいと思い、遠隔診療ツールを探す中で『聴シンクロ』を発見しました。」

写真:小川一徹

福井大学医学部
学生
小川一徹
「これから医療現場に飛び込む身として、答えを自分で見つける力を鍛える意味でも臨床から判断するアイテムが増えることは望ましいと考えています。」

写真:山本悠里

福井大学医学部
学生
山本悠里
「『聴シンクロ』は実際の心音を聴くことができるのがメリット。先生が聴きながら指導してくれるため、医学生の教育に役立つと考えています。」

導入の背景:対面実習もままならず、オンラインの教育手段を模索

2020年初頭、世界を襲った新型コロナウイルス感染症。以降、人びとの生活様式は一変し、非接触による3密回避やリモートワークが当たり前のものとして定着しました。

そうした中、最もシビアな対応を迫られた現場の一つが医療機関です。現在も徹底した感染症対策を敷き、安全・安心な医療供給体制の維持に努めています。

予期せぬパンデミックの到来は、次世代の医療を担う医学部の学生にも影響を及ぼしました。新型コロナ前には通常のルーティンだった、リアルな臨床実習が困難となり現場で学ぶ医療教育の機会を奪われてしまったからです。

この状況に頭を悩ませた福井大学医学部の山内高弘教授は「オンラインツールを活用した実習ができないものか」と大学側に提案。NTTスマートコネクトが提供する「聴シンクロ」を導入しました。

「聴シンクロ」は、インターネットを通じて映像・音声とともに患者の心音・呼吸音を伝達できる画期的なサービス。全国各地で医療資源の逼迫が叫ばれる中、訪問看護や在宅診療、介護施設の医療支援向上などを目的として開発しました。リアルタイムで遠隔地から聴診を行い、医師が診察できるのが大きなポイントです。

「新型コロナが猛威をふるい、臨床実習がままならなくなったことに危機感を感じていました。

何とか打開したいと思い、遠隔診療ツールを探す中で『聴シンクロ』を発見。

『これは学生の実習に活用できるに違いない』と確信し、当方からNTTスマートコネクトにコンタクトを取りました」(山内教授)

山内高弘教授の写真

福井大学医学部
病態制御医学講座 内科学(1)
山内高弘教授

採用のポイント:対面と遜色のない聴診音とNTTグループの高い信頼性が決め手に

「聴シンクロ」では、株式会社シェアメディカルが販売するデジタル聴診デバイス「ネクステート」にチェストピースを接続。これを遠隔地にいる医療従事者が患者に当て、病院やクリニックの診察室にいる医師がインターネット越しに心音・呼吸音を聴くことが最大の特徴です。

NTTスマートコネクトがクラウド基盤に構築したプラットフォームにより、医療にも耐えうる高品質なサービス提供を可能としました。経済産業省、総務省が定める「医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン」にも準拠しています。

サービスイメージ図
「聴シンクロ」のサービス概要

「聴シンクロ」を通じて心音・呼吸音を聞いた山内教授は対面と遜色ないクオリティだったことから採用を即決。また、NTTグループの信頼と実績の高さが選定のポイントになったと話します。

「信頼性の高いNTTの設備を使用しているので、非常にきれいに音を聴くことができます。大がかりな装置ではなく、コンパクトに持ち運べる点も実習にマッチしていました。NTTスマートコネクトでは遠隔診療を想定していたため医学部の実習は想定外とのことでしたが、新たな取り組みとして喜んでいただけました」(山内教授)

導入効果:実習で示された「聴シンクロ」の可能性

本格導入は2022年10月から。現在は福井大学医学部附属病院にて、定期通院の外来患者に「聴シンクロ」を活用しています。

将来的には、診察室で山内教授が患者に聴診器を当て、離れた場所で学生がヘッドホンで心音・呼吸音を聞き取るスタイルを目指しておりますが、現在は同一室内で実習が行われています。

これは実際に教授がどの位置に聴診器を当てているのかを目視確認するという、実習ならではの効果を狙ったものです。

「診察室にいなくても先生の診察の様子を見て、聴診音を聴けるので、こうしたツールはありがたいです。ほかの感染症が流行する可能性もありまるので、そうした状況を想定しても非常に有効だと思います。」(小川一徹)

「現状では、実際に患者の心音を聴くことができる機会はほぼありません。動画共有サービスなどにアップされている動画で録音された心音データを聞いて勉強していますが、『聴シンクロ』は実際の心音を聴くことができるのがメリット。先生が聴診しながら私たちに指導してくれるため、医学生の教育に役立つと考えています。」(山本悠里)

実習の写真

福井大学医学部附属病院における「聴シンクロ」を用いた実習のイメージ

今後の展望:臨床から判断するアイテムが増えることは望ましい

「テクノロジーの発展を思い知らされました。録音されたデータとリアルタイムで聴くデータは緊張感が違います。

これから医療現場に飛び込む身として、答えを自分で見つける力を鍛える意味でも臨床から判断するアイテムが増えることは望ましい。

複数人が聞いて意見を交わすことで診断や治療の成功率も向上するはずです」と期待を寄せます。」(小川一徹)

小川一徹さん(左)、山内悠里さん(右)

福井大学医学部生の小川一徹さん(左)、山内悠里さん(右)

山内教授は「心音と呼吸音を通信で飛ばすわけですから、それだけでも技術的にはすごいこと。学生たちには、『革新的な試みに参加できて幸運だ』と話しています。いまは同じ室内での実習ですが、いずれは学生が院内の待機室にいるシチュエーションでも活用できるようにしたい」と手応えを感じています。

「患者さんも医師も若い世代はオンラインツールに抵抗がなく、むしろ興味を示してくれます。これを機に全国の医学部で実習ツールとして広がれば、Withコロナ時代の医療教育の課題を少なからず解決できるのではないでしょうか」と山内教授。

山内教授

今後もNTTスマートコネクトは、「聴シンクロ」を医療の新たな選択肢として積極的に提案していきます。

※当記事に記載されている内容は、2022年12月現在のものです。

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